レポート

不動産クラウドファンディングとは(4)

2020/04/15

第4回は、不動産投資型クラウドファンディングが地域再生に活用されているケースについて触れます。

まず、公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会と公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会の「リアルパートナー3月号(2020年)」の記事を引用します。

上場REITの場合、広く一般投資家から資金を集め、投資先を分散してリスクを管理しながら利回りや売却益を得る必要があるため、投資先の不動産としては大都市圏のオフィスビル、商業施設、レジデンスを複数組み入れたものが中心だ。

一方、不動産投資型クラウドファンディングでは、投資先を明示したうえで協賛社を募るという性格上、ピンポイントで地方都市の物件に投資するタイプが比較的多く含まれている。

小規模不動産特定共同事業の事例として挙げるとしたら、神奈川県鎌倉市に本社がある株式会社エンジョイワークスの取組みです。

同社の第1号案件は、使われていなかった「空き蔵」を宿泊施設「The Bath & Bed Hayama」にリノベーションしました。

クラウドファンディングによる調達 2018年6月から募集、600万円を調達
その他の資金調達 金融機関からの借入れ1,000万円程度(ノンリコースローンではないと思われる)
小規模不特事業者(当時、現在は不動産特定共同事業者に変更) 株式会社エンジョイワークス(代表取締役 福田和則)
運営主体 株式会社グッドネイバーズ(代表取締役 福田和則)
物件所在地 神奈川県三浦郡葉山町
用途 宿泊施設(簡易宿泊営業)
敷地/延べ床面積 敷地 100㎡程度、蔵:1階、2階ともに20㎡程度
事業費 リノベーション工事費用:約1,400万円

上記のスキームとしては、株式会社エンジョイワークスが小規模不特事業者として資金調達を行いました。

そして、同社がマスターレッサーとなり、株式会社グッドネイバーズに固定賃料で転貸しています。その賃料が投資家への配当の原資となっています。両社はグループ会社(代表取締役が同一人物)であるため、賃貸条件や賃料の設定にかかる交渉などはなく、第1号案件には最適な物件だったのではと考えられます。

株式会社エンジョイワークス https://enjoyworks.jp/company

株式会社グッドネイバーズ https://good-neighbors.link/page1/company/

両社は葉山町を中心に多数の商業店舗を運営しており、株式会社エンジョイワークスが資金調達を行った際は、様々なイベントを開催することでファン層(投資家候補)を巻き込んでいると思われます。

同社は建築事務所でもあり、同社の建築デザインを選好する消費者も多いと言われています。また株式会社グッドネイバーズは複数の店舗を葉山で運営しており、まちづくりのプレイヤーとしての認知度が高いことも想像できます。

このため、同社の第1号案件は、既存のブランド力、コストは伴うものの丁寧なファン層の取込みと鉄道会社からの支援プログラムの活用もあり、目標額を達成されたというのが筆者の感想です。


サブリース物件の証券化に関する考察

株式会社エンジョイワークスのように2つの法人を所有するスキームは、不動産特定共同事業には有効と言えます。不動産特定共同事業は、不動産賃貸を前提(不動産賃貸収入を配当に充てる)とした事業であることが理由です。

特にサブリース物件を証券化する場合は、運用期間中のテナントリスクが高いだけでなく、売却益もないため投資商品としては取得物件よりも劣ると考えられます。

また、自社のリーシング力がない場合、あるいは商圏が小さい地方(地域)で代替のテナント発掘がほぼ不可能な地域の物件の投資商品は元本割れのリスクが高まります。

サブリース物件に限りませんが、優良なテナントの選定が組成する上での最重要のファクターであり、小規模不特事業者としての良質なトラッキングレコードの形成に必要となるのではないでしょうか。

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