今回は、不動産クラウドファンディングが地方再生の切り札になるか?について考えてみます。
この問いを「YesかNo」かと問われたら「Yes」と答えます。
現状では、「不動産クラウドファンディング」ではなく、「小規模不動産特定共同事業」が地方再生の切り札になり得る可能性がある、と思われます。
「可能性がある」と条件を付けた理由は、単に建物を改修するための資金調達をするだけでは地域の再生には繋がらないからです。
地域の歴史や将来の動向調査、課題の特定、地域での人脈作り等を基に、地域でも特定の場所に資源を集中投下することが再生に向けた有効な手段のひとつではないかと考えます。
地域の狭い範囲の中に何か中心となる建物(事業者など)があり、地域の特色を踏まえ、建物(事業者)とのシナジーの高いと思われる事業を活性化することで「地域としての差別化」につながる不動産物件の証券化を行うことだと考えます。
例えば、観光地であれば、宿泊施設と周辺の農業・小売業・飲食業などはシナジーが高く、事業者間の協働による地域の活性化が望ましいでしょう。そのために、地域の様々な資源(観光資源や人的資源)や長期的な地域の成長(衰退)の方向性等を継続的に調査し、その調査を基に、活性化に望ましい再生物件を特定していく手法を弊社は行っています。
このように、コンテンツと将来を見据えた上での小規模不動産特定共同事業が、今後の地方創生に貢献するのではないでしょうか。
小規模不動産特定共同事業者は、賃貸物件の管理業の延長線にあるものでもないと考えています。中長期的な地域に対するビジョンを持った上で、地域内外の様々なプレイヤーと提携し、地域への波及効果を考えた物件とテナントの選定が求められます。
そして、小規模不動産特定共同事業者の小規模1号事業者は、最大1億円までは投資家からの資金調達が可能です。この制限の中で、宅建事業者としてどのような事業を行えば持続可能なファンド運営ができるのかを検討する必要もあります。
様々な課題を挙げてしまいましたが、小規模不動産特定共同事業者のハードルは以下にまとめられるでしょう。
既存建物の有効利用(中古不動産市場の流動化向上)の点で、小規模不動産特定共同事業は有効な手段になり得ます。
しかし、小規模不動産特定共同事業(不動産証券化事業)は、高度な知識が必要となる局面もあります。事業を運営する上で、地域のプレイヤーたちだけでなく、弁護士、税理士、司法書士といった方々と連携した事業になる可能性があります。
小規模不動産特定共同事業を行うには、申請要件と現在の社内リソース(人的資源やIT環境)を把握・比較することから始めると良いと思います。
5回に分けたレポートになりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
※弊社は小規模不動産特定共同事業の申請代行は行っておりません。