ホテル旅館経営は、365日24時間営業しサービスの提供をするだけでなく、お客様の安全に関しても常に注意を払う事業です。また、特に宿泊部門が顕著ですが製造業や小売業のように在庫を抱えることが出来ず、1日が終われば空室の部屋の在庫が消えてしまいます。その点では、旅客運送業に似ているとも言えます。
装置産業とは「一定以上の生産やサービスの提供のために巨大な装置を要すると考えられる産業」です。また、労働集約型産業とは「人間による労働力による業務の割合が大きい産業、接客を行う商業やサービス業といった第三次産業」です(どちらもウィキペディアを参照)。
ホテル旅館事業は旅客運送業に似ていると書きましたが、テーマパーク(ディズニーランドやUSJ)に似ていて、どちらかと言えば、やや後者に近いのではないかと思います。ただし、宿泊予約に関しては旅客運送業の酷似している面があります。
旅客運送業では、フライトごと乗客を出来るだけ集めることが必須です。乗客数にかかわらず、燃料費や空港発着費等のコストは発生します。また、テーマパークでは、巨額のお金を投資してアトラクションを作り(ハードの更新)、来客者へのサービスを徹底し、新規客とリピーターを増やす努力もしています。
「装置産業」と「労働集約型産業」はホテル旅館事業(業界)の分類であり、そのように分類された業界で求められるものには、施設管理(修繕や改装)であり、ブランド(サービススタンダード)の構築というものは、最低限の条件とも言えます。
近年は、施設管理の資金繰り問題が旅館廃業の主な原因と言われています。また、施設に対する投資金額を抑えた簡易宿泊施設(ゲストハウスやホステル等)の新規開業が増加している理由も、装置産業の一面を表していると思われます。
訪日外国人観光客が増加し競争環境が変化している中、当社に支援を依頼して下さっている事業者様の個別の状況に合った解決策は何だろうかと考えている中で、広義での「マーケティング」という言葉が出てきます。
USJの集客に成功された森岡毅さんという方が、マーケティングは「価値を創造する仕事」と定義されて、次の3つが重要な要素だとおっしゃられています。
(1) 市場構造を解き明かす
(2) 消費者が自社ブランドを選択する理由をつくる
(3)(1)と(2)を実行できる組織をつくる
当社でも、(1)~(3)を意識して、事業者様に伴走する形で支援を行っています。(1)は、国内外からの宿泊者動向や地域間の競争環境の情報提供、(2)は地域内での競合他社の調査(市場調査等)、(3)は事業者様の人的・経済的リソースに合わせた改善の提案と実行支援となります。
現在のホテル旅館事業は、運営力(オペレーション)が解決策になりますが、建築(施設管理)や経営(資金繰り、事業計画)の知識と経験も求められる高度な事業となっています。
運営・建築・経営の総合力が求められる事業ですが、各分野のノウハウは書籍等で得られるものではなく、専門家からの助言の下に実践し蓄積していくものでもあります。
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